何をどう間違ったのか(間違ってはいないのですが)、この度、築古マンションからタワーマンションへ引っ越すことになりました。
昭和から令和へ、一気にタイムスリップしたような衝撃。今回は、そんな我が家の「タワマン引越し大作戦」の裏側と、誰もが一度は頭を抱える「ある問題」についてお話ししたいと思います。
最初の1週間は「借りてきた猫」状態
新居のタワマンに足を踏み入れた瞬間、私たちの心を満たしたのは、高揚感……ではなく、圧倒的な「おののき」でした。
床の一歩一歩が妙に輝いている。壁はどこを見てもシミ一つない。
「お願いだから傷つけないで、汚さないで……!」
最初の1週間、私とイモ夫は、まさに「借りてきた猫」状態でした。荷解きをするのにも、段ボールの角が壁に擦れないよう、スローモーションのような動きで行う始末。ゴミを捨てるために共有廊下を歩くときでさえ、「足音が響いて、コンシェルジュさんに怒られたらどうしよう」と、抜き足差し足お忍び足です。あの築48年の、何をやっても許してくれそうな寛大さはどこへやら。すっかり空間のオーラに呑まれていました。
「タワマンに引越しの挨拶はいらない?」イモ夫の予言
そんなビクビクした生活の中で、いよいよ直面したのが「引越しの挨拶、どうする?」という大問題です。
日本の美しい伝統、向こう三軒両隣へのご挨拶。築48年のマンションに入居したときは、迷わず定番の洗剤セットを手に「よろしくお願いします!」と笑顔を振りまいたものです。しかし、ここは現代の城、タワマン。
私が「挨拶品、何にしようかな。やっぱり定番のタオル?それとも、ちょっとおしゃれな焼き菓子?」とスマホを片手に頭を悩ませていると、ソファで寝転がっていた夫のイモ夫が、妙に冷静な声でこう言ったのです。
「ねえ、ばな子。そもそも最近は、引越しの挨拶なんてしないんじゃない? それにタワマンって、プライバシーを何より重視する人が多いでしょ。いきなりインターホンを押されたら、むしろ『誰!?』って警戒されるだけだよ。引越しの挨拶なんていらないって」
イモ夫の言葉に、私はハッとしました。確かに、防犯意識が高いからこそタワマンを選んでいる人も多いはず。親切心のつもりが、相手にとっては「プライバシーの侵害」や「ただの不審者」になってしまうのかも……。
悩みに悩んだ結果、私たちは一つの結論に達しました。
「もし、向こうから挨拶に来てくれた人がいたら、その時に改めてこちらから伺おう。それまでは、あえて用意せず様子を見よう」
こうして私たちは、挨拶品を一つも用意しないまま、新生活に突入したのです。
2ヶ月続く引越しと、姿なき住人たち
タワマンは世帯数が桁違い。なんと引越し期間が「約2ヶ月」にわたって設定されています。毎日、どこかの階でトラックが停まり、養生されたエレベーターが稼働しています。
そうなると、何が起こるか。
「お隣さんは、もう引っ越し済みなのか? それともまだ空室なのか?」が、さっぱり分からないのです。表札を出す文化もほぼないので、静まり返るドアの向こうに誰かがいる気配すら掴めません。同じフロアの人とすれ違うことすらありません。
さらに不思議な現象があります。
これほど多くの世帯数が暮らしているはずなのに、エレベーターで驚くほど人に会わないのです。基数が多いせいもあるのでしょうが、たまにロビーで見かけるくらいで、同じフロアの住人に至っては「本当に実在するのだろうか?」と疑念を抱くほど。
イモ夫の「みんなプライバシー重視だから」という言葉が、静まり返る廊下にシンシンと響くようです。今のところ、我が家のインターホンが鳴る気配は、宅配便以外に全くありません。
タワマンでの「引越し挨拶」の正解は?
結果として、イモ夫の「引越しの挨拶はいらない」という予言は、今のところ大正解だったようです。変に気負って挨拶品を買い込まなくて本当によかった、と胸を撫で下ろしています。
もちろん、マンションの規模や地域、ファミリー層の多さによって正解は変わるかもしれません。でも、タワマンという「あえて人付き合いを希薄にできる快適さ」を求めている人が多い空間では、「何もしない」という選択もまた、一つの大人のマナーなのかもしれませんね。
借りてきた猫から、早くタワマンの猫になれるよう、ばな子とイモ夫のすったもんだな日常はまだまだ続きます!

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