タンスと棚を処分しただけなのに、洋室1がこんなに広かったなんて。
溢れていたモノを片付けて、ホコリを払い、床を拭いて、
目の前に現れたのは、「ああ、ここ好きだったな」と思える部屋だった。
この間取り、この空間、この空気感。風が通り抜ける明るい部屋。
引っ越す準備をすればするほど、
なぜかこの家に対する愛着が増してくる。
ほんとうに売ってしまっていいんだろうか?
正直、少し売りたくなくなっている自分がいる。
でも、ここを手放すと決めたのには理由がある。
それは――60代は、終活のはじまりだから。
ここであと30年暮らせるか?
80代、90代になったとき、この築古マンションのままで大丈夫だろうか。
水道はタンクに溜める昔のタイプ。小さな段差も多い。
将来の自分が安心して暮らせるかを想像したとき、
「いま買い替えなきゃ、もう一生このままかもしれない」と思った。
人生100年時代。60代はまだ元気だし、気力も体力もある。
でも、自分の足で動いて決断できる最後のタイミングかもしれない。
だからこそ、「終の住処」としてのマンションを、いまのうちに選び直しておきたいと考えた。
そして。子どもが独立して夫婦2人になってから「そろそろ片付けなくちゃ」と思って早3年。
腰は重く、日々の忙しさを理由に手をつけられずにいた。
そんなジレンマにも今回の買い替えが背中を押してくれた。
メルカリに出品したり、ジモティで譲ったり、思い切って捨てたり――
モノを整理することも、終活の一環なんだと実感している。
きっとこのまま何もなければ、
私はずっと「片付けなきゃ」と思い続けながら、
モノに囲まれて暮らしていたと思う。
これからは、ミニマルに、軽やかに、生きたい。
新しい住まいでは、なるべくモノを持たず、
心地よく、静かに、年齢を重ねていけるように。
“終の住処”を選ぶというのは、
単に家を買い替えることじゃない。
これからの人生をどう生きるか、自分と向き合う決断でもある。
「いまここで手放すのが正解なのか」
「この家をもっと大切にする選択肢はないのか」
そんな迷いも出てきたけれど――
でもやっぱり、30年後を見据えたとき、買い替えは間違っていないと思う。
「まだ早いかも」と思った60代。
だけど、いまだからこそ、できることがある。
きれいに整えた部屋に立って、
「ありがとう」と心の中でつぶやいた。
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